カブが水没しても走れる水深は?

今回はカブ70の水没とその後のメンテの話です。

水没と言っても今回は自走して帰宅出来る程度の水深でした。

じゃあ、どのくらいの水深なら走り続けられるのか?

その時、どんな不具合が出るのか?

注意点もあるので順を追って話して行きます。

僕はその日、カブで仕事に出ました。天気予報は土砂降り。記録的な降雨量だそうです。

外に出ると天気予報通り、ザーッというよりゴーッとさえ聞こえるような雨量!

とりあえず、ワークマンのイージス(耐水圧1万)を着て出かけます。

20分程走るとチ◯コまで水が滲みて来ました。

念の為にと持ってきたワークマンの3レイヤーレインスーツバイカーズ(耐水圧2万)に着替えたら大丈夫でした。

耐水圧1万の差は結構大きいですね。

耐水圧の低いレインウェアだと最初に股間に浸水するパターンは多いです。

股間には直接雨が当たる訳じゃないけど、シートと身体が体重により強い圧力で押し付けられているので、局所的に見れば水の分子に高い水圧が掛かります。

耐水圧1万でも弱い雨程度なら大丈夫ですが、土砂降りだと無理だと分かりました。

土砂降りの日に高速で長距離とかだとゴアテックスが必要でしょうね。

長期間ツーリングなら、そんな日もあるかも知れません。

おっと話が逸れました。

カッパに関しては、これで大丈夫、と一安心して走っていると、目の前の道が巨大な水溜まりになっている!?

すいませんが、急いでたし、土砂降りのなか悠長にスマホで写真撮るのは超面倒臭かったので、この時の写真はありません。

普段通り慣れた道なので、その区間が少し低くなっているのは知っていましたが、巨大水溜まりなんて初めてです。

さすが記録的雨量!

暇な日に気ままに走ってるなら、余計な冒険なんかしませんが、今日は仕事。

この道を通らないとかなりの大廻りを強いられます。

そんな事したら約束の時間に間に合わない。

100%無理なら諦めますが、ここは一か八か、進んでみます。

水溜まりの向こう側に見える、アスファルトまでは約30メートル。

その30メートル区間の水深が分かりません。

普段通ってる記憶を辿り、完全に水没するような深さでは無い筈、と思ってギアを1速に。

注意する事はスロットルを戻さない事。

開け続けてればマフラーの排気口からの浸水は最小限に抑えられます。

ゆっくり水面に向かって進入します。

心配なのはエアクリーナーの吸気口まで浸水する事。

そこまで来たらエンジンも止まるし、電装も危険。

水深がそこまで深くない事を祈りながらスロットルを開け続けます。

既にマフラーは浸水。

排気がゴボゴボと音を立てているのが聞こえます。

オフ車だったら楽勝なのに、と思いながら更に進みます。

何だか、さっきより深くなって来たような・・・。

フロントのアクスルシャフトは完全に水没した様子。

前輪が水を掻き分けて波が立ってます!

おお、思ったより深い!

ドキドキしながら、スロットルを戻しちゃいけないというプレッシャーと戦います。

レッグシールドの下半分は水中です。

普段は雨や風から足を守ってくれるありがたいレッグシールドも今だけは、単なる水の抵抗です。

エンジンは吹けてるのに、ちゃんと前に進まない!?

水中でリアタイヤがホイールスピンしてるようです。

やばい!ここで止まったらアウトだ!

長靴が水没するのも忘れて足を水中に突っ込み地面を蹴ります。

何とか前に進みました。

あと5メートルで揚陸です。

と安心した時!

エンジンが止まった!!

頭の中真っ白で、反射的に両足で地面を蹴りながら何とか5メートル先の陸地に押し上げました。

水深はバッテリーまでは来てないはず。

プラグキャップのリークか?

試しにプラグキャップを外すとボトボトッと水滴が落ちました。キャップ内の水滴を吹き飛ばしてみます。

これでどうかな?

スロットル全開でキックペダルを踏み下ろします。2ストモトクロッサーでエンストした時によくやった、燃焼室の生ガスを吹き飛ばす方法です。

ブィィィ〜ン!!

やった、かかった。

電装の少ないキックのキャブ車だからエンジンかかったんだと思います。

少し走ってみます。エンジンは問題なく吹けるけどフロントブレーキが効かない!

リアブレーキは大丈夫。

元々フロントブレーキが弱いカブです。リアブレーキが無事なら何とか走れます。

しばらく走ってもフロントブレーキは自然回復はしません。グリスが流れて摩擦面に付いたかな?

後はエンジンオイルの乳化が心配ですが、とりあえず走れそうなので、先に仕事を終わらせます。

水没した後は、一晩放っとくと錆が浮いて来ます。

ブレーキは錆びても、バラして耐水ペーパーで擦れば何とかなりますが、エンジン内部は錆びると面倒臭いので、その日のうちに対処した方が良いです。もしどうしても時間が無ければ、フィラーキャップを外してオイルが乳化してないか確認しましょう。

帰宅して、すぐにエンジンオイルを交換します。

エンジンオイルに多量の水分が混入するとオイルが乳化して白いネトネトが浮いて来ます。

こうなると潤滑性能が損なわれてエンジン各部に多大なダメージを及ぼします。

ちなみに別に水没しなくても水分は混入します。

例えば、冬の朝イチ、エンジンの内側には結露した水滴が付いています。見えませんけど。

当然、この水滴がエンジンオイルに混ざります。そのまま走行して油温が上がれば多少の水分程度なら蒸発します。

でも、短時間走行とかで油温が上がる前にエンジンを止めてしまったらどうでしょう?

まだ蒸発してないのに、中途半端に暖まったクランクケースの内壁は外気温との温度差が大きくなり、更に大量の結露した水滴が付いて、それもエンジンオイルに混ざります。

こうして、例え乳化しなくてもエンジンオイルはどんどん薄くてなっていきます。

だからチョイ乗りするな、と言ってもカブですからねぇ。仕事でチョイ乗りせざるを得ない事もあるでしょう。

それならエンジンオイルをマメに替えるのが最善です。乳化や劣化したオイルに比べれば安物でも新品オイルの方が高性能です。

今回は乳化はして無いようです。乳化するとフィラーキャップのレベルゲージの上の辺りに半固形状のネトネトが付く事が多いです。

オイルを抜いても普通に黒く汚れたオイルが出てきました。

黒いのは、ちょうどオイル交換時期だっただけで、今回の水没とは関係ないです。

乳化してる場合は安いオイルを入れて、かなり早めに再交換する所ですが、今回は、その必要は無さそうなので、家に残ってたワコーズのトリプルアールを入れます。

ここ最近渡り歩いて来たカブのオイル比較インプレもプロステージ、トリプルアールに始まり、モチュール、ヒロコー、スピードハート、そしてトリプルアールに戻って来ました。トリプルアールはベンチマークみたいなもんです。

が、オイルのインプレは別記事に書く事にして、今回は水没後のメンテです。

まず、明らかに異常の出ているフロントブレーキを掃除します。

フロント周りのバラし方も結構慣れてきました。

チャチャッとバラします。

すると・・・

案の定、泥水で流れたグリスがドラムとシューに付着してます。

全周に渡ってグリスがうっすら付着してたので、一晩程度じゃ錆びは出ていないようです。

写真に見える茶色いのは泥です。

シューとドラムの両方をブレーキクリーナーで湿らせたメカタオルで何度も拭きます。

普段のメンテでも同じですが、ここは妥協しないで下さい。

摩擦面に僅かな油脂分が残っているかどうかでブレーキの効きがかなり変わります。

摩擦面の油脂分を完全に拭き取ったら、今度はブレーキカムとシューのヒンジ部にシリコングリスを塗ります。

ここは必ずシリコングリスなどの耐熱性の高いグリスを使いましょう。

耐熱温度の低いグリスだと、高温時、つまり高速域からのフルブレーキング時に流れ出して摩擦面に付着します。

これがどれほど恐ろしいか分かりますよね?高確率で何処かに突っ込みます。

ところでこちら、スピードメーターギアです。

ここにも泥が入ってたら面倒臭いなと思ってたんですが、何故かメッチャ綺麗!

しかも新品時のグリスがまだこんなに残ってました。

何でホンダはこんなに大量のグリスを塗って出荷した?

と疑問に思いましたが、もしかして走ってるうちにグリスが熱で粘度低下して少しずつギアに流れ込む事を狙ってるのかな?

という疑問。

いつものバイク屋さんに聞きに行ってみると、どうやら予想的中のようです。

それならゴミの付着も無いしスピードメーターギア周りはこのままにして置きましょう。

次にボトムリンク周りもバラします。

この辺はバラしてパーツクリーナーと歯ブラシで洗浄してグリスアップするだけです。

ここはブレーキと違い、耐熱性はそれ程要りません。

代わりに荷重の掛かる部位なので普通にリチウムグリスとか、ちょっと拘る人はウレアグリスとかで良いと思います。

ウレアグリスはリチウムグリスより少し値段が高いですが、性能面ではリチウムより上です。

行きつけのバイク屋さんは

「ワコーズのハイマルチ(ウレアグリス)は、ワコーズのマルチパーパス(リチウムグリス)に比べて高温時に硬いので、フリクションを減らしたい時は不向き」

と言ってましたが、今回はカブなのでハイマルチの耐水性を優先します。

カブはチェーンカバーやレッグガードなど、装備からして雨天走行をめちゃくちゃ意識してあるバイクです。

ビジバイにとって対雨性能がどれ程重要かって事ですね。

ならば、各部のメンテの際も耐水性重視でケミカルを選んだ方が、カブの良さを長期間維持出来ると思います。

そんな理由から、チェーンにはチェーンルブじゃなく、ワコーズのビスタックをぶっかけます。ワコーズチェーンルブ比較

ビスタック、買った事ない人は一度買って、指に付けてみて下さい。

同じワコーズでもチェーンルブはサラサラ、チェーンガードはヌルヌル、ビスタックはベットベトです。

触れば一発で違いが分かります。

これなら雨くらいじゃ落ちません。

水道水を直接かけても落ちません。

チェーンクリーナーで擦ればやっと落ちるかな。

ディグリーザーなら普通に落ちるって感じです。

そんなにベットベトでフリクション増えないの?と思うでしょ。

確かにコンマ1秒削りたいならお勧めしません。

でも公道では・・特にカブなら最高速が1〜2キロ落ちる事より、雨の後でもチェーンメンテ不要な事の方がメリット大きいと思います。

で、チェーンメンテと一緒にリアブレーキも勿論メンテしました。

あとはスイングアームのピボットですが、ここはブッシュが圧入されていて、交換する場合はスイングアームASSYになります。

ブッシュだけではパーツも出ないみたいだし。

という訳でピボットは異音もガタも無いので、そのうちグリスアップでもする事にして今回のメンテは終了です。

この後の実走ではブレーキも足廻りも問題なく良く走りました。

エンジンオイルについては、ちょっと気づいた事があるので、別記事にまとめます。

こういうメンテ、面倒臭いかも知れないけど、バイクへの愛が深まり、普通に走ってるだけで、深まる前より幸福感を感じられます。

この効果、デカいですよ!毎日の幸福指数が少し上がります。

では今回はこの辺で。