バイクが好きなのでエンジンを壊したくない、という人に向けて書きます。
今回はエンジンオイルの粘度についてです。
ちょっと目で見てイメージしてみましょう。
みんなメシ食った後の皿、自分で洗ってますか?
こんな男臭い記事を読んでいるのは野郎が多いでしょうけど、たまには奥さんや彼女にばっかやらせないで自分で洗いましょう。
例えばカレーやなく汁で汚れた鍋や皿。試しに水をかけてみて下さい。
全然汚れが落ちないでしょう。今度はお湯をかけて下さい。
結構落ちますよね。今度は熱い熱湯をかけて下さい。あっと言う間に汚れが落ちたでしょ。
カレーや肉汁は油です。
油は温度が上がると柔らかくなるので熱湯が流れる水圧に負けて流れたんです。
温度がどのくらいの時にどのくらいの柔らかさになるか?これが粘度です。
粘度とはつまりオイルの硬さです。
どのくらいドロドロネチャネチャしてるか、それとも水のようにサラサラしてるか。
ドロドロネチャネチャな程硬いオイル、サラサラな程柔らかいオイルです。
オイルの箱に書いてある10w-30とか20w-50とかが粘度です。
10w-30を例に取ると10がオイルが冷えている時の粘度、30がオイルが温まっている時の粘度、wはウィンターの略で簡単に言えば冬にどのくらい寒くなる地域で使うか?という意味ですが、最低気温10度なら10wにしなさいという意味ではありません。
経験上の話で恐縮ですが20wでも東京の真冬に普通に使えます。
0wとかに比べると多少、朝イチの暖機に時間がかかりますが、それでもタバコ一本吸う程度の時間で走り出せる程度の柔らかさにはなります。
第一、0wなら暖機時間が短いからってエンジン自体がまだ冷たいのに直ぐに走りだすのはエンジンへのダメージが非常に大きいので暖機はちゃんとするべきです。
暖機の話は別の記事に詳しく書きます。
さて、ここから本題ですが、エンジンオイルを買う時、どの位の粘度にしようかな?って迷いますよね。
まぁ基本はメーカー指定の粘度なんですが、メーカー指定というのは、あくまでも最低限、すぐに壊れて止まる訳じゃない、という程度のスタンスで指定されています。
この辺の話はオイルの種別とも絡むので鉱物油vs合成油みたいな話になるので、それは別の記事にまとめます。
では粘度の話に戻して、極論で言えば硬過ぎと柔らか過ぎのどっちがいいか?
答えは硬過ぎの方が良い、です。
メーカー指定が1番ってのは当たり前なのでちょっと置いといて。
因みにオイルライン、オイルポンプやオリフィスなどを改造した場合は適正粘度は大きく変わります。
先にデメリットから話します。
硬過ぎのデメリットは暖機に時間がかかり軽くフケるようになるまで時間がかかるとか、
温まった後も柔らかいオイルに比べると高回転まで回りきらないとか、
高い粘度が抵抗になるので燃費が悪くなるとかありますが、
エンジンを壊さない事を最優先で考えた場合、懸念するのはドライスタートです。
ドライスタートとは
エンジンを止めた後、そのまま長期間エンジンを動かさずに置いておくと、
液体であるオイルが重力によって、だんだん下に落ちて来て、
エンジンの上部とか、オイルが留まる為の溝などが無い所の油膜が無くなってしまって
金属面同士が直接触れ合っている状態でエンジンを始動してしまう事です。
ただ、エンジンを掛けない期間が多少長くても、
完全に油膜が無くなるという事はほとんど無いようで、肉眼で乾いているように見えても、
顕微鏡レベルで見ればまだ薄っすらとオイルが付いているそうです(ワコーズ営業マン談)。
どうせ暫く眠ってたエンジンを始動する時は長めに暖機するんですから、その間にオイルポンプからのオイルが供給されます。
オイルポンプから拍出されたオイルは腰下に行くオイルと腰上に行くオイルの系統に分かれます。
ここで腰上に行くオイル量を決める為に、オリフィスというとても細い穴を通ります。
穴が細いのでドロドロの硬いオイルだと抵抗にはなるかも知れません。
特に硬めのオイルの暖機前とか。
それでも全く流れない訳じゃないし、元々の油膜もあるし、後述するメリットの方が大きいので、エンジンが冷えてるのに走り出して即全開⁉︎とかアホな事しなければ、これが原因で壊れる事は無いと思います。
高回転、高圧縮な仕様のチューニングエンジン等で
オリフィスを拡大する加工がありますが、
余程大きなオイルポンプを付けない限り、腰下に配分されるオイルが減るという事です。
クランクはカムまわりの2倍の回転数で回る上に
駆動力を受け止めているので掛かる荷重が段違いです。
それにオーバーホールも腰上なら簡単ですし。
なのでオリフィスの拡大加工は、かなりのハイチューンエンジンでなければ必要無いし、
やるとしても試走しながらヘッドの過熱加減を見ながら少しずつ拡げた方が良いです。
そこまでやる場合はオイルクーラーとセットで考えたいですが。
次に柔らか過ぎるオイルのデメリットです。
当たり前ですがオイルが温まった時に粘度が下がり過ぎて充分な油膜を保持出来なくなる事です。
と言ってもすぐに壊れる訳じゃ無いですが。
ただ、油膜が弱ければ、特に高回転まで回した時に、金属同士がオイルを挟まずに直接ぶつかる回数が増えます。
油膜が強ければ、この回数が減ります(ゼロにはなりません)。
正確には粘度と油膜強度は少し違うんですが、ここではイメージしやすくなるように書きます。
金属同士がぶつかれば、削れたり傷付いたりします。
これが何度も繰り返されてエンジンは消耗して行きます。
そして最後は動かなくなります。
まぁ動かなくなるまで乗り続けてもらえたバイクは幸せかも知れませんね。
その手前の、動くんだけど変な音や振動が出るとか、4ストなのに2ストみたいな煙が出る、とかの初期症状を経験した人は多いと思います。
これも詳しくは別の記事に書きますが、エンジンの消耗が原因です。
油膜が強ければ金属同士が当たって削れる事を減らせたという事です。
その為にはドロドロベトベトのオイルが良いって事です。
じゃあ、何の為に世の中に低粘度オイル、今どきの言い方をすれば低燃費オイルがあるのか?
ひとつは環境性能の為。
もうひとつは使い捨てエンジンの為です。
環境性能、要は低燃費です。厳密にはこれだけじゃ無いですが。
サラサラオイルで抵抗が少なければクランクがクルクル軽く回ります。
つまり低燃費です。
低燃費を実現すれば、セールスポイントになり、環境性能を考えている一流のオイルメーカーだと評価されます。
メーカーとしては、この評価が重要です。
その為に低燃費、環境性能とパッケージに大きく書きます。
その代わりに金属パーツが擦り減ります、とは書きません。
余計な事は書かなくても違法じゃないから。
もうひとつの使い捨てエンジン。
例えば、レース用エンジンです。
レースでは勝つ事が最優先です。
その為に必要なら耐久性も落とします。
肉厚の薄くて軽い、つまり寿命の短いパーツを抵抗が少なく柔らかい、油膜の弱いオイルで高回転でブン回します。
今、油膜が弱いオイルと言いました。
レーシングオイルの油膜が弱い訳ねぇだろ!と叱られそうですね。
確かに。
レーシングオイルはフリクション(抵抗)を減らしつつ、尚且つレースでの負担に耐えられるような考えかたで作られています。
でも・・・
オイルメーカーのその技術力を、フリクションが多少増えても良いからエンジンを守る事、つまり油膜を強く厚くする事を重視してオイルを作ったら?
“エンジンが1レース壊れなければいい”
じゃなくて
“エンジンが何十万キロ壊れないか”
に重点を置いたオイルを同じコストをかけて作ったら・・・
レースでは負けるかも知れないけど、ツーリングに行きまくって10万キロ走っても、絶好調のエンジン。
特に最高の一台に出会ってしまった後の人にとっては、いつまで走れるか?は死活問題です。
それは人によってカワサキZⅠだったり、古いハーレーだったり、いろいろでしょう。
補修部品を探すのも大変です。
レーシングオイルを使うレーシングエンジンは来年は使いません。
最新型じゃないと勝てないから。
勝つ事を優先して作られたオイルは、10年後にエンジンが壊れない事は考えていません。
まぁ10年乗ればオイルだけの問題じゃないけど、オイルが重要な要素であるのは確かです。
だってエンジンほど、金属同士が高速で擦れてる場所ないですからね。
メリットを一言でまとめると
硬いオイルのメリットはエンジンが長持ちする事。
柔らかいオイルのメリットはパワー感のあるエキサイティングなエンジンフィーリングになる事。
という感じです。
本当にそうなる事も体験しました。
それでも純正指定から大きく外れない程度に硬いオイルを勧めます。
パワー感を感じたいならオイル粘度以外の方法でやった方が良いです。エンジンイジるとかそう言う意味です。その方が効果も高いですし。
そもそもオイルは保護する為のパーツです。それを削ってまで他の仕事をさせるのはリスクが大き過ぎます。その為に粘度だけでなく、性能の高いオイルを使う事が重要なので、それはまた別の記事に書きます。
それに良いエンジンオイルって良い匂いがします。(気のせいか?( ̄▽ ̄)
エンジンオイルに興味を持ってみるのもバイク乗りの楽しみの一つだと思います。