今回はちょっとマニアックなエンジンオイルとオイルの香りの話です。
ひまし油って知ってます?
凄く簡単に言うとゴマ油です。
2スト全盛期にはエンジンオイルの世界で植物性オイルなんて言われてたヤツです。
その頃のエンジンオイルのベースオイルの分類は植物油、化学合成油、半化学合成油、鉱物油、て感じで4種類に分けられる事が多かった覚えがあります。
潤滑性能もこの順番で、最強なのが植物油でした。
ただ、植物油は扱いが極端に難しくて、日持ちしないのでカストロのR30という植物油を使ってた時は、開封した缶をサランラップに巻いて冷蔵庫に入れてた覚えがあります。
なのでもっぱら、サーキット専用オイルでしたね。
ひまし油の甘い香り、サーキットの匂い、という良い匂いの代名詞みたいになってる植物性オイルですが、どんな匂いか嗅いでみたい人は、台所にあるゴマ油を少量、火で炙ってみると、結構近い匂いがします。
一応、油なので炙る時は安全管理して下さいね。
排気煙の場合はガソリンも混じってるので同じ匂いにはなりませんが、ガソリンも混ぜて炙るのは危険過ぎてお勧めしません。
アロマオイルのひまし油もあるのでそれが一番安全ですね。
最近のエンジンオイルの世界では、高性能と言えば、エステルという言葉を良く耳にします。
ポジション的にはAPIのベースオイル分類でも1番上のグループⅤに分類されるので、まるで昔の植物性オイル?と思っちゃいますけど、エステルっていうのは、あくまでも化合物の総称なので、ひまし油とは意味が違います。
でも個人的にはエステルの中でも上質な物なら、潤滑性能だけ見れば、ひまし油みたいなもんじゃね?とは思いますが。
要はエンジンオイルマニアとしては、高い潤滑性能に安心しつつ、良い匂いを嗅いで、いい気分になりたいんですよ。
そこの満足度が石油系化学合成油との差です。
別に石油系でも高い性能の物もありますけど、
石油系の化学合成油は匂いを嗅ぐと
「ああ、石油の匂いだね」
って匂いがします。
石油系の匂いは嫌いって人の方が多いと思います。
大多数の人はガソリンスタンドの匂いより果物屋さんの匂いの方が好きでしょ?
エンジンオイルのインプレにも書きまましが、モチュールの300Vの15w-50は新品オイル開封時、クリームソーダの匂いがしました。
ただ、同じ300Vでも15w-60の方は、クリームソーダの匂いは弱めで少し草みたいな匂いが混じってました。
どちらの300Vも全開走行直後に香ばしい匂いがするのは同じです。
草みたいな匂いって、そういえば、カストロのR30も少し草みたいな匂いがしてました。
雑草を刈って焼いた時みたいな。
もしかして植物性の成分の匂いなのかな?
因みに2ストは排気煙にオイルが入ってんだから匂いがするのは当然だけど、4ストでオイルの匂いが出るのか?
もちろん2ストほどの明からさまな匂いはしません。
2ストは混合気の中にオイルが混ざっていて燃焼室でガソリンと一緒に燃やされます。
4ストは混合気には混ざってません。
4ストのピストンリングは一部の特殊な物を除き、大抵はトップリング、セカンドリング、オイルリングの三本構成です。
オイルリングの穴から滲み出たエンジンオイルはシリンダー壁にくっ付いて油膜を作り、ピストンとシリンダー、そしてピストンリングとシリンダーの間を潤滑します。
ピストンが下降する時に余分なオイルはピストンリングで刮ぎ落とされますが、ピストンリングとシリンダー壁が直接接触しない程度の油膜は残されます。
という事は、上死点前で着火して、燃焼伝播しながら上死点を通過、膨張しながら下死点前で排気バルブが開くまで、高温の燃焼ガスはシリンダー壁に付着しているオイル油膜を加熱し続けます。
ただ、4ストオイルと2ストオイルは燃焼時に何処にオイルが居るか?が違います。
燃焼する時の混合ガスの温度は1000〜1500度位らしいですが、シリンダー壁面は冷却効果により200度強位までしか上がらないので1000度以上で焼かれる2ストオイルと違い、200度強までしか加熱されない4オイルが簡単に燃え尽きる事はありません。(一部例外あり)
とはいえ燃焼室で一緒に加熱されてる事には変わりないので、排気煙にも少量ながらオイル中の蒸発しやすい成分は混じります。
あくまで少量です。
エンジンオイルを他銘柄に変えた時の排気臭の違いは2ストに比べたら些少です。
それでも、オイル自体の匂いが変わるとエンジン周りから漂う匂いも変わります。
排気臭以外の原因のひとつがブローバイガスです。
チューニングによりエアクリーナーボックスを撤去したバイクや、排ガス規制が緩かった時代のノーマルバイクは、ブローバイガスが大気開放されています。
モンキーの型式Z50Jのブローバイガス排出チューブはこんな感じ。
エンジン掛けてる時は排気より目にしみるガスが出てます。
ブローバイガスは排気ガスと違い、クランクケース内に漏出したガスや蒸発成分によってクランクケース内に溜まったガスです。
つまり排気ポートから排出される排気ガスに比べて、エンジンオイルに触れている面積が広く、触れている時間も長いです。
よって排気ガスに比べてエンジンオイルの匂いも多量に混ざります。
ブローバイガスを大気開放しているバイクの方がエンジンオイルの匂いが強いのは、この為です。
大気開放していない最近のノーマル車でもフィラーキャップを開けてブローバイガスの匂いを嗅ぐ事は出来ますが、排圧の高いエンジン、例えばビッグシングルとかだとオイルが顔に飛んで来たり、ブローバイガス自体が有毒成分を多く含むので、あまりオススメはしません。
また、最近ではベースオイルの研究が進み、化学合成によってひまし油に匹敵する潤滑性能を人工的に作れるようになって来た為、酸化に弱いひまし油を敢えてベースオイルとして採用するメリットが少なくなって来たので、ひまし油ベースのエンジンオイルを作るオイルメーカーも少なくなりました。
そんな中、ひまし油を積極的に使い続けているオイルメーカーがあります。
広島高潤という国内のメーカーです。
ひまし油をエステル化する事によって、酸化の問題を改善し、ストリートユースに対応したようです。
レースでの実績も多く、小さなメーカーですが信頼できると思います。
そのオイルを使ってみたのでインプレを別記事に書きます。
最後に一言。
化学合成油の技術が進化した今、性能だけで言えば、ひまし油に拘る必要はありません。
でも趣味としては、性能が良くて香りも良ければ、楽しさ係数が上がると思います。
それじゃ今回はこの辺で。