今回はエンジンオイルのインプレです。
モンキーにはここしばらく、ワコーズのトリプルアールの10w-40を入れてました。
まぁ良いオイルですよ。可もなく不可もなく。
以前入れてたモービル1の車用オイルと違って、キックスタートする時に一次側クラッチが滑る事も無かったし、
入れてすぐに感じる滑らか感と、入れて500キロ過ぎた辺りから油膜が定着してきたのか粘度低下したのか高回転の伸びも良くなったのに異音が出る訳でもなく。
結構気持ち良く走れてたんですが、700キロか800キロ辺りから感じ始めたんです。
更に高回転が伸びるようになり、レスポンスも良くなって来た事に。
普通ならエンジンが軽く回るんだから嬉しい事なんですが、この古くてパワーの無いモンキーのエンジンを労わる事を考えると、何で軽く回るのか?気になり出しました。
普通、レスポンスが良くなったり、上が良く回ったりするのは、フリクションが減った時。
例えば、粘度の低いオイルを入れたり、油膜の薄いオイルを入れたりした時です。
もし、それと似たような状態になっているなら耐久性を重視する場合は、決して良い状態とは言えません。
ただ、元々の純正指定粘度が10w-30なので、多少粘度が落ちて適正な粘度になっただけかも知れませんが。
ワコーズのオイルは一部を除き、軽く回る印象を与える物が多い気がします。
それがまるで油膜が薄いような印象を与えるんですが、実際にはピストンスカートやシリンダーに付いた傷の量を見れば同価格帯の純正オイルよりは余程高性能です。
これは、とあるチューニングショップに数十個並んでいた使用済ピストンを見比べてみて確信しました。
良いオイルと低品質オイルには明確な差がある、と。
エンジンの内部を見ないとなかなか実感出来ない事ですが。
また、商売として考えた場合、オイルの品質で勝負しなければならない専門メーカーと純正では、オイル開発に対する熱の入れ様も違うでしょうし。
純正オイルは純正という絶対的な信頼性があるので、オイルは必要最低限の性能を満たしていれば売れます。
純正オイルにとっては極端な高性能よりも必要最低限の性能のオイルを低価格で提供する事の方が重要です。
ただ、純正オイルは沢山売れるからこその優位性もあります。
ベースオイルを仕入れる時に、大量に仕入れるのでロット毎のばらつきが少ないそうです。(これは行きつけのバイク屋で聞いた)
最低限の性能で良いなら、それを安定して安価に使い続けられる純正にも一定の需要があるのも分かります。
でも、バイク趣味人としては最低限の性能じゃ困るんです。
気に入ったバイクに乗り続けたいので、エンジンが壊れても直します。
エンジンの修理費が、最新の新車が買える金額だったとしても、です。
移動の道具じゃなく愛車だからです。そこで考えました。
オイルを1番真剣に作ってるメーカーはどこだ?
ワコーズは良いメーカーだと思います。
エンジンオイルの性状表をウェブサイトに載せるなんて自信の表れでしょう。
実際、良いオイルが多いです。
ワコーズ入れときゃ間違いない、なんてあちこちで聞くのももっともだと思います。
ただ、ワコーズもケミカル屋であってオイル専門メーカーじゃないんですよね。
だから駄目だなんて言いませんが、エンジンオイル専門メーカーの
「エンジンオイルで負けたらウチは終わりだ!」
みたいな本気のオイルを試してみたい、と思いました。
候補は色々とあったんですが、ある単語に惹かれて一目惚れしちゃったメーカーが広島高潤。
ある単語とは「ひまし油」です。
ひまし油についての詳細は別記事にまとめます。
一言で言えば”元祖!サーキットの香り”です。
もちろん4ストなので2ストみたいにモロにオイルの匂いはしませんが、2ストでサーキットを走った世代にとっては、ひまし油は思い出の匂いなんです。
広島高潤はまだ試した事が無いので、試してみたいと思いました。
最近でこそ、添加剤とかフォークオイルとか作ってるみたいですが、頼めばオリジナルブレンドも作ってくれるみたいです。
そんな面倒臭い事までしてくれるの⁉︎って辺りにエンジンオイルに対する本気を感じました。
それじゃ前置きはこの辺にして、オイル交換です。
まずは千キロ走ったワコーズのトリプルアールの残量チェック。
千キロ位じゃ全然減ってないですね。
臭いチエック。
ガソリン臭さは少ない方かな。
燃料希釈も許容範囲内ですね。
色と鉄粉チェック。
鉄粉は無し、色は適度に黒いですねー。
これは、エンジン内の汚れをちゃんとオイル内に取り込んでくれてると言う事なので、頑張って仕事してくれてる証です。
いよいよ使用後オイルチェックの最重要項目、粘り気チェック。
指にオイルを付けて擦ります。
この時、どの位、ネバネバしてるか?それともサラサラになっちゃってるか?を見るんですが、こればっかりは感覚なので文章で伝えにくいです。
ただ、指の感覚の練習方法はあります。
新品オイルを指に付けて擦り、手を洗いながら水の付いた指を擦り。
これを何度か繰り返します。
オイルと水の滑りの違いが分かると思います。
水だと指が少し引っかかりますよね。
劣化したオイルは水ほどじゃないけど少し指が引っかかります。
シフトが硬くなってきたオイルは大抵この状態になってます。
因みに、指が冷えてると指に付いたオイルの温度も下がり粘度が少し上がるので、冷え性の人は、冬は少し身体を温めてからやって下さい。
もうひとつの方法として、この写真のようにオイルの付いた指を少しだけ離します。
この時、どのくらいオイルが伸びるか?伸びた状態を何秒維持できるか?を見る方法もあります。
ただ、これも慣れが必要なので、とりあえず指で擦る方法の方が分かりやすいかも知れないです。
では、そろそろヒロコーの出番です。画像使い回しですいません。
ヒロコーの缶にこんな事が書いてあったので、かなり良く振りました。4ストスペシャルエクストラバージョンの新品オイルを容器に出してみました。
色は茶色というか褐色というか、オイルっぽい色ですね。
匂いは、石油系でもない、モチュール300Vみたいなクリームソーダの匂いでもない、草の匂いと言えば近いかな?
カストロのR30の匂いに似てるような気もするし・・・。
もちろん、指に付けて擦りました。
ヌルッヌルです。
指の滑りを千キロ使用後のトリプルアールを比べると、こっちの方が良く滑る気がする。
ただ、念の為、缶に少し残ってた未使用のトリプルアールと比べると、あんまり変わらないような気もする・・・。
元々の10w-40という粘度は変わらないので、そのせいですかねー。
肝心なのはエンジンの中でブン回った時の潤滑性能なんで、ここでのヌルヌル加減はあくまで目安です。
オイルの量は上限ギリギリまで入れますが、上限を超えないようにしましょう。
オイルが多過ぎるとクランクが油面を叩き、ウォーターハンマー現象が起きます。
プールに飛び込む時、お腹から落ちると物凄い衝撃ですよね?
あれがウォーターハンマー現象の軽いヤツです。
クランクが回転するような超高速で油面に当たったら、ヘタするとクランクが壊れます。
かと言って少な過ぎるとGが掛かった時にオイルが寄ってオイルポンプの吸い込み口にオイルが無い、なんて事もあるので少な過ぎもダメですけど。
あと、ドレンボルトの締め付けには必ずトルクレンチを使いましょう。
ドレンボルトはオイルでヌルヌルです。
しかも熱くなったり冷たくなったり温度変化が激しく、常に膨らんだり縮んだりしてます。
緩みやすいんです。
かと言ってフルパワーで締めたらクランクケースが終了します。
トルクレンチを使いましょう。
お待たせしました、ここから実走インプレです。
エンジンの掛かり易さは変わらないですね。
粘度同じなんだから当たり前ですが。
走り出した後は、千キロ走ったトリプルアールは多少なりともヘタってた可能性も考慮し、なるべく新品の頃のトリプルアールのフィーリングを思い出しながら、インプレします。
たかだか千キロ前だから、結構覚えてますよ。
まず、低速でゆっくり走ります。
ヘッドは走り出す前の暖機で既に熱くなってるので、信号待ちでクランクケースカバーを触ります。
クランクケースカバーまで温かく感じる程度になれば、ビッグエンドのクリアランスも適正値に近くなって来たと思って良いと思います。
暫く走ってエンジンを完全に暖機します。
低回転でスロットル全開にしてみます。
トリプルアールに比べるとプレイグニッションが少ない気がする。
プレイグニッションってのは、低回転高ギアでスロットル開度が大きい時にエンジンがカラカラカラって鳴るヤツです。開度が小さいと起きません、実圧縮が上がらないので。
このモンキーの場合の回転数で言えば2000とか2500位ですかね。
あれは、熱くなったカーボンとかが火種になって勝手に着火しちゃう早期着火なのでエンジンには悪いです。
それが少ないという事は、ピストンからシリンダーへ熱を逃がす、熱伝導率が高いオイルなのかな?あくまで想像ですが。
因みにピストンヘッドの温度が低い時やオーバーホール後のカーボンが付いて無い時は起こり難く、走行距離の多いエンジンで全開走行の直後とかだと起きやすいです。
では、回転を上げていきましょう。
プレイグニッションの起こる回転数を過ぎて低速トルクで走れる回転数、だいたい3000位からはトリプルアールに比べてトルクが太くなったような気がします。
油膜厚い系のオイルに良くある事です。
これはもしかすると・・と思いながら最高速アタック。
案の定、高回転の伸びが重い感じ。
伸びない訳じゃ無いんだけど、ピークパワー回転域を過ぎた後の完全に伸びだけの領域の回転上昇が遅い。
ただ、この回転域になると柔らか系オイルの時はヘッドの辺りからミーンという音、多分、バルブ周りじゃないかと思うんですが、金属が共鳴してるような音がしてました。その音があまり聞こえない。
油膜の厚さがクッションになって音が消されてるのかな?これも想像ですが。
まぁ、回転が重いと言ってもピークパワーを過ぎた後の話なので、街乗りなら殆ど関係ない気もします。
サーキットだと、ストレートの最後に伸び切っちゃって、もう少し伸びて欲しいとか有りますけどね。
こんな感じの長い登り坂での最高速が少し上がったので、パワーバンド内でのトルクは上がったのかも知れません。
後は、何キロ走ったらオイルが劣化して来るか?ですね。
これを書いてる時点で300キロ位走りましたが、流石に300キロじゃフィーリングは変わってません。
元々、回転の軽さよりエンジン保護重視で選んだオイルなので、これで正解だったと思ってます。
因みにエンジンがかなり熱くなった時でも2ストのような”ひまし油の香り”はしませんでした。
同じヒロコーの飛竜という、モロにひまし油なオイルも買ってあるので、匂いネタはそっちに期待するとしましょう。
オイルの耐久性については、いずれまたレポートします。
それじゃ、今回はこの辺で。