今回はモンキーのクラッチを修理します。後半でモンキーが持つ世界観を話します。
症状はクラッチレバーを握って離した時に、半クラの位置でレバーが引っ掛かるように止まってしまう症状です。
実はこの症状、モンキーの持病と言うか構造上の弱点です。
行きつけのバイク屋さんによると
「モンキーはクラッチ板を引っ張り上げるクラッチリフタープレートの部分に
エンジンオイルが回らない構造になってるので、クラッチリフタープレートが擦り減り易いから、長く乗るならグリスアップした方が良い」
との事でした。
と言っても、かれこれ20年以上、走行距離にして4万キロ(多分)もオイル交換だけで走り続けてくれてるエンジンです。
エンジン自体は定評あるカブ系エンジンですが、
カブには付いてないマニュアルクラッチの関係がやっぱり弱いんでしょうね。
とは言え、構造も簡単なエンジンなので、実際に自分でやってみたら
「この程度なら別にいいや」
と思える程、簡単な作業でした。
この作業でもし苦労するとしたらショックドライバーを持っていない場合です。
プラスの固定ビスが外側に2つ、内側にひとつあります。
運良く簡単に緩めば良いですが、もし固着してたらショックドライバー無しでは無理です。
プラスの頭をナメる前にショックドライバーを買う事を薦めます。
では作業の実際です。
クラッチワイヤーを外します。
右側のクランクケースカバーの真ん中にある丸いプレートを外します。
このプレートはマニュアルクラッチ車のメンテ用の蓋なのでカブには有りません。
このふたつのプラスビスに早速ショックドライバーを使います。
僕は、このKTCのショックドライバーを買う前にケチって安物を買ったら、すぐに壊れました。
ちゃんとしたメーカー物がオススメです。
ネジを舐めた後の苦労を考えたら安いもんです。
プレートを外すとクラッチリフタープレートとクラッチカムが見えます。
クラッチカムのストッパーピンは磁石で抜きます。
すぐに抜けないときは潤滑剤を吹いてから磁石で引っ張りながらカムを前後に動かしてみて下さい。
少し抜ければ後は簡単に取れます。
次にこの下の方にあるプラスビス。
ここもおそらくショックドライバーが無いと無理です。
逆に普通のドライバーで簡単に緩むようでは、締め付けトルクが足らなくて危険だと思います。
これも緩めば後は楽勝です。
プレート類はただ嵌ってるだけなので手で簡単に取れます。
クラッチリフタープレートにはアジャスターが付いてるので、緩める前にアジャスターの締め込み量を確認しておきましょう。
アジャスターを外したクラッチリフタープレートです。
新品と比べるとデカい傷が付いてます。
新品にグリスを塗ります。傷が付いてた辺りは擦れる所なので満遍なく塗ります。
ここに使うグリスをどんなグリスにしようか?と迷ったんですが、サービスマニュアルには何も記載無し!
ホンダさん、勘弁してください!
プロが見る為のマニュアルだとしても、せめてグリスの種類は書いて欲しい。
エンジン内なのでモリブデングリスにしようかと思ったけど、増ちょう剤だけ見れば耐熱性の高いウレアグリスなんてどーよ?と思ってワコーズのハイマルチにしてみました。
もし、高温で流れちゃうようなら、次はモリブデンかな。
モリブデンならグリス本体が流れちゃってもモリブデンの粒子が残るかも知れないという淡い期待を残して。
ホントはスレッドコンパウンドの耐熱850度とか超魅力なんだけど、スレコンはあくまでもコンパウンドなので。
プレートにグリスを塗ったら後は、逆の手順で組み付けるだけです。
バラす事が出来た人なら組み付けは説明する事は何も無いです。
僕は次回バラす事を考えて、ビスやガスケットにスレコンを塗ったくらいですかね。
組み付け後の試乗では、当たり前ですが、スムーズで気持ち良いクラッチフィーリングが復活しました。
今回のネタは、ちょっとした不調を直しただけで、作業内容としては、大した事はしてません。
もし、バイク屋さんに依頼しても工賃もそんなに高くないと思います。
ぶっちゃけ、ブログのネタとして面白いかどうか微妙な感じです。
ただ、この作業、自分でやる事で、愛車の構造が良く分かり、愛車のウィークポイントが良く分かり、愛車への愛が深まります。
自分の手を真っ黒にして手間ひま掛けた愛車が元気良く走った時の、思わず鼻歌を歌いたくなる気分。
もし、味わった事ない人には是非知って欲しいと思いました。
難しい事まで抱え込む必要はありません。
難しい事はプロに頼みましょう。
頑張れば出来そうな事ならやってみましょう。
僕は若い頃、改造は好きだけど修理は嫌いでした。
100を120にするのはドキドキするけど、80に下がった物を100に戻すだけってのは興奮しなかったからです。
でも長年バイクに乗り続けていたら、100の力を維持する事の凄さが段々と分かって来ました。
そのバイクの本当の長所を引き出すには長い時間が必要だと思います。
このバイクの長所はココ、短所はココ。
ならこうやって乗れば一番楽しい。
ってのが分かるまで、沢山の経験が必要だから。
雑誌のインプレみたいな、ハンドリングがどうとか、パワー感がこうとか、そんな単純な話じゃなくて、
10年くらい乗り続けないと、気付かない事ってあると思います。
このモンキーの場合は、エンジンも足回りもノーマルです。
サスなんて、わざわざノーマルに戻しました。
しかも新品のノーマルサスを買って。
ノーマルモンキーに乗って20年。そこにしか無い世界があると思ったからです。
サーキットで膝を擦る事と対極にある世界。
時間と心が開放される「のんびり」という世界。
その為にノーマルモンキーが持つ高性能、全てがゆっくりしてる事が必要なんだと。
その高性能を維持する為の今回の修理です。
時速200キロで膝とタイヤから煙を出す事に疲れたら、こんな世界、どうですか?