今回は、ホンダ横型エンジン、モンキーやカブ系エンジンのエンジンオイルはどれが良いのか?
このテーマでの現時点での頂上決戦です。
比較するのは
スピードハートのmini10w-40
VS
ヒロコーの4ST Special Extra Version 10w-40
です。
今回はモンキーのエンジンオイルをヒロコーからスピードハートに交換します。
なぜ頂上決戦かと言うのは前回のカブのオイル交換記事に書きましたが、この記事のラストでもう一度書きます。
今まで横型エンジンで試したオイル、特にモンキーにはホンダ純正オイルに始まり、激安オイル、並行輸入オイル、有名メーカー物、色々試しました。
また、その間、約20年の間にオイルを作る技術も進歩しています。
オイルの性能もさる事ながらオーバーホール無しで長年走り続けているモンキーの耐久性を賞賛するべきかも知れません。
数度の事故と無数の転倒を乗り越えて。
車体も丈夫なんですよ、モンキーは。
軽くて小さいから衝撃時の応力も小さいんでしょうね。
そういう丈夫さではオフ車より丈夫です。
モンキーの小さなエンジンはエンジンオイルにも優しいです。
ノーマルなので3.1馬力しかありません。
OHV時代のカブですら4.5馬力あります。
パワーが少ないって事は結果的に発熱量も少ない訳です。
エンジンオイルを劣化させる原因の上位は、水分や燃料の混入による希釈、ブローバイガスに含まれる硫黄酸化物などによる酸化、高温による添加剤の劣化、です。
この内の高温による劣化が発生し難いって事です。
化学合成油ならベースオイルは高温に強いですが、添加剤は高温に弱いです。
よく「油温が120〜130度になったオイルはもうダメだ」なんて聞きますが、鉱物油でもない限り、ベースオイルは、その程度の温度ならへっちゃらです。
ベースオイルだけならエステル系で350度、PAO系で250度くらいまで耐えられると言われてます。
因みに添加剤ってのは、市販の添加剤じゃなくてエンジンオイルに元から入ってる添加剤の話です。
ベースオイルに色々な添加剤を混ぜる事によってエンジンを守る為に必要な性能を確保してるので添加剤は重要です。
ここら辺の詳しい話は、また別の記事にまとめます。
さて、今回はモンキーのエンジンオイルをヒロコーの4ST Special Extra Version 10w-40からスピードハートのmini10w-40に交換します。
前回はワコーズのトリプルアールからヒロコーに交換しました。
そしてヒロコーを入れてから約千キロ走りました。
このヒロコーのオイル、他の化学合成油と比べても凄いです。
今まで入れたオイルは千キロ走るまでの間に、メカニカルノイズが増えたとか、回転上昇が妙に軽くなったとか、シフトの感触が固くなったとか、何かしらの変化があったんです。
ワコーズのトリプルアールは良いオイルでした。千キロ走っても異音も無く軽く回ってくれました。ただ軽く回り過ぎて不安になっただけです。リッター¥3000以下限定なら最強かも知れません。
トリプルアールのインプレ記事もあるので良かったらどうぞ。
しかも走行千キロですから、まだまだ使えるレベルですが、エンジンオイルの場合、変化=劣化なので交換してました。
でも、ヒロコーのこのオイルはその変化がありません!
少なくとも千キロでは。
特にこのエンジンはオイルフィルターが有りません。正確には遠心フィルターというのが付いてはいるんですが、大きめのゴミを取り除く程度の物なので、変化のあるオイルは早めに交換したくなります。
ヒロコーは新品の頃と同じように下から上まで綺麗に吹け上がり、メカニカルノイズも静か。
メカニカルノイズって、つまり金属同士が当たるから音が出る訳ですからね。
リッターあたりの価格はスピードハートよりヒロコーの方が¥300位高いので全く平等な比較じゃないけど、ほぼ似たような価格帯って事で。
因みに前回のオイルインプレで書いたようにカブ70には既にmini10w-40を入れてます。
今のところヒロコーに並ぶ位、好印象です。
となれば、ホンダ横型の為にあるような、600ccと800ccのラインナップのあるオイルを横型で徹底的に試してみたくなるのが人情ってもんです。
で、今回、モンキーにも投入です。
カブは70ですがモンキーは50です。
パワーはもちろん違いますが、発熱量も違います。
暖機時に違いが分かります。
冷間時、二台同時にエンジンをかけます。
同時と言ってもモンキーのエンジン掛けてすぐにカブもエンジン掛けるだけですが。
カブ70はタバコ1本吸う間にヘッドが暖かくなってきます。
その頃モンキーはまだヒンヤリしたまま。
タバコをもう1本吸い終わる頃にはカブ70のヘッドは素手で触るのが躊躇われるくらい熱くなりクランクケースカバーがほんのり暖かくなってきます。
その頃50のモンキーはやっとヘッドが少し暖かくなって来たかな?程度。
70と50はアイドリングだけでこれだけ差が出ます。全開走行したらかなりの差になるでしょう。油温計が欲しくなります。
50ccの特にノーマルの場合、発熱量が少ない事でメリット、デメリットがあります。
メリットはもちろん、高熱による弊害が少ない事です。
例えば高熱耐性の弱いオイル、要するに鉱物油を使っても油膜切れなどを起こしにくいとか。
鉱物油の熱耐性は110〜120度位までと言われています。
120度なんてXR100モタードで高回転を暫く維持すればすぐに到達します。この頃はサーキット通いだったので油温計付けてました。
化学合成油なら物によりますがPAO系で200〜250度位、エステル系なら300度以上までベースオイルは耐えられると言われてます。
その温度だとエンジンオイルに含まれる添加剤はアウトですが、ベースオイルが無事なら、その場で焼き付く事は避けられます。
空冷こそ化学合成油を使うべきだと思います。
この辺りの話も別の記事にまとめますので興味があれば読んで見て下さい。
それじゃモンキーにスピードハートmini10w-40を入れてみましょう。
恒例のオイル量チェック。
ちょうど千キロ走ったヒロコーの4ストスペシャルエクストラバージョン10w-40のオイル量を確認します。
オイル量をフィラーキャップの油面ゲージで見ると
入れた時はチェッカーの上端まで入れたはず・・・少し減ってる?
次はオイルを抜いて匂いをチェック。
空キックしたり、車体を右に傾けたり暫く待ったりを数度繰り返してオイルを抜ききります。
オイルが出て来なくなったら忘れる前にドレンボルトを締めちゃいましょう。ちゃんとトルクレンチでね。
ガソリン臭さは僅かに臭うかな?という程度。
以前、安価なオイルを使ってた時期に、かなりガソリン臭かった事があるので、それに比べたらガソリン臭は少ないので、オッケーって事にしましょう。
キラキラ光る金属粉は無し。
オイルを指に付けて粘度チェック。
お!?引っかかり感も無いし、指紋のザラザラ感も感じない。
色はしっかり黒くなって汚れをオイル内に吸収してるみたいだけど、粘度は殆ど低下してないような気がする。
これなら、もう少しオイル交換スパンが長くても保つかも。
今回の使用後チェックで唯一気になったのはオイル量が減ってた事。
多分、オーバーホール無しで長年走り続けたエンジン側がヘタって、クリアランスが広がってるだろうから、オイルも多少は燃焼したんだと思います。
そのクリアランスの広がったエンジンなのにあまりガソリン臭くならないと言う事は、強い油膜でしっかり密閉出来てたって事でしょ。
以前、ガソリン臭かった時は、ハイドロクラッキングオイルだったから。
鉱物油と化学合成油との差は、こんな所にも出るようです。
ではスピードハートのmini10w-40を入れます。
既にカブに入れてあるので2度目ですが、相変わらず綺麗なワインレッドですね。
匂いは、草原みたいな香りに少し甘さが混じったような仄かな香り。
オイル変態としては、このままテイスティングしたくなりますが、グッと堪えます。
規定量入れて油面確認したら、少し少なかったので規定量上限ピッタリまで入れます。
少し暖機して、オイルが落ちて来るのを待って再度油面確認。
そして指に付けて粘度チェック。
新品なので当然ですが、とても良く滑り、引っかかり感が全くありません。
指で擦った感触としては、さっきのヒロコーと同じくらいかな。
となると、千キロ走った後にどう変わるか?
ヒロコーは粘度低下はありませんでした。
いや、厳密には劣化しないオイルなんて存在しませんが、僕の指じゃ分からない程度って意味です。
ただ、同じヒロコーでもカブに入れてた飛竜というオイルは劣化が分かりました。
使用後の飛竜を指で擦った時、ギュギュッという引っかかり感があったんです。
指紋のザラザラが少し分かるような感触。
ヒロコーの飛竜は上位バージョンもラインナップしていて、上位バージョンにはヒートカットという添加剤が入っています。
僕が使ったのは下位バージョンです。
因みに今回抜いたヒロコーの4ストスペシャルエクストラバージョンもヒートカットが入っています。
言わば元々が上位バージョンみたいな物で、下位バージョンとも言える4ストスペシャルというオイルもあるみたいですが、使った事はありません。
と言う事は、ヒートカットという添加剤の威力が凄いのか?という疑問も浮かびますね。
同価格対決に拘るなら本来ならヒロコーの4ストスペシャル対スピードハートのミニの方が良かったのかも知れませんが。
そのうち検証しましょう。
でも、今回入れるスピードハートのmini10w-40にも燃焼室の密閉性を高める添加剤「フォーミュラミックス」というのが入ってるらしいので、
メーカー公称の「横型エンジン上部のオイル油膜が薄くなる事を考慮した」つまりシリンダーとピストンの吸気側の油膜保持力の強化、という謳い文句を信じる事にします。
因みに、メーカー公式のフォーミュラミックスの説明文には
「強靭な油膜と優れた金属への親和性を発揮する一方、使用オイルのフリクションロスを減少させる効果はありません」
と書いてありました。
つまり、軽く吹け上がる事よりも金属面の保護が優先です、と言う意味みたいです。
横型には合ってると思いますよ。
もともと、一次側クラッチの重さのお陰でレスポンスが鈍い代わりにのんびり走って疲れにくい特性が横型の長所なので、多少レスポンスが遅くなった所で気付かないんじゃないかな。
そんなこんなでオイル交換終了です。
実走してみましょう。
テストコースに使ったのはヒロコーをテストしたのと同じ、お気に入りのいつものコース。
運良く、ヒロコーの時と同じくらいの無風状態。
乗ってみた感じは、低回転でトコトコする気持ち良いトルク感、プレイグニッションの発生回転数、低速から中間域そして高回転域へ繋がるフラットトルク感、高回転域での伸び感、最高速度、登り坂でのトルク感、エンジンからのメカノイズ等の全てがヒロコーの4ストスペシャルエクストラバージョンと大差ありません。
所詮は乗り手の感覚なので厳密には差はあるんでしょうが、僕には分かりませんでした。
となると、この新品状態での感触が千キロ走っても変わらないかどうか?が、勝負処ですかね。
今まで、千キロ走ると少しメカノイズが増えたとか、妙に軽く吹け上がるようになったとか、登り坂でのトルク感が減ってやたらと上が回るので最高速度は伸びたとか、新品状態からの変化、つまり劣化を感じるオイルが殆どでした。
海外有名メーカーの高級品も含めて。
それを殆ど感じなかったヒロコーの4ストスペシャルエクストラバージョンは良いオイルだと思います。
それに対して敢えて「横型用」を前面に打ち出して来たスピードハート!
早く千キロ走った後の結果が見たいけど、だからと言って、わざと遠くまで走ったり、普段と違う走り方をしたりはしません。
極力同じ条件で比較します。
その結果は後日、別記事に書きます。長くなりそうなので。
では今回はこの辺で。