ワコーズの営業マンに聞いた、エンジンオイルの選び方。

もう何回目になるでしょうか。

ワコーズの営業マンにエンジンオイルの事を聞いてみた、シリーズです。

ワコーズ営業さん、いつもお世話になってます。

お陰様で結構詳しくなってきました。

今回のお題は、ワコーズのオイルの選び方です。

では早速いきましょう。

自分

「そろそろ暑くなって来たので、みんな、特に空冷の人達は熱対策に追われてる時期なので、熱と言えばWR!という訳で、まずはWRについてお聞きします。

一部のワコーズマニア(笑)の間でこんな事が囁かれているんです。

WRは耐熱性は良いかも知れないけどライフが短くてすぐに交換しなきゃいけないから公道向きじゃない、と。

WRってライフ短いんですか?」

ワコーズ

「それは使い方次第ではその通りだと思います。

WRの得意分野は高温高負荷運転時の油膜の強さです。

例えば耐久レースです。

逆に言えば、それ以外のオイルにとって辛い状況では、本領発揮出来ません。

公道使用の場合、有りがちなのがチョイ乗りです。

まだエンジンが冷えていてピストンとシリンダーの間のクリアランスが広い状態でガバ開けすると大量の混合気が燃焼室に流れ込み実圧縮が上がります。

上死点前で点火して、燃え広がりながらピストンが上死点に来る辺りで理論上の最大圧縮になります。

この時点ではまだ未燃焼成分も多く残っています。

ところがクリアランスが広いので腰下に吹き抜けるガスも増えます。

このガスとは未燃焼の燃料や燃焼時に発生する硫黄酸化物も含んでいます。

これらが大量にクランクケース側に吹き抜けてオイルに溶け込み、オイルを酸化させたり、燃料希釈を起こしてオイルが劣化します。

WRの場合はレースのような油温が管理されている状態で、これらの劣化に対して最適化されています。

まだクリアランスが広い状態で高負荷を掛ける事は想定していません。

そういう意味でWRは競技向けのオイルだと言えます。」

自分

「なるほど。WRのライフが短いと言ってる人達は、WRは洗浄剤が入ってないからすぐに劣化するんだ、と言う人も居るようですが、それは間違いですか?」

ワコーズ

「洗浄剤にも色々な種類があります。チョイ乗りをしてもある程度は対応出来る物もあれば、高負荷運転時に効果が高い物もあります。

それも含めてWRは徹底して高温耐性に振ってあります。

なので公道使用で、しかもチョイ乗りが多いならハッキリ言ってWRは不向きです。」

自分

「そこまでハッキリ言ってくれると助かります。やっぱり使い方の問題という事ですね。

それでは、公道使用で1番多いパターンだと思われる、チョイ乗りする事もあるけど、高回転をブン回す事もあるので耐熱性も欲しい、という人には、どんなオイルがお勧めですか?」

ワコーズ

「(苦笑い)確かにそういう方が多いでしょうね。

まずチョイ乗りの部分だけを考えると先程の洗浄剤の事も含めてプロステージが優れています。

ただし、チョイ乗りはオイルにとって極めて過酷な状況なので、完全に対応する事は出来ません。

なので値段を安めに設定して、早めに交換して欲しい、という意味も含めてです。

次に高回転をブン回す、の部分ですが、これは発熱量によってはプロステージでは対応しきれない場合もあります。

全開時間が長いとか、チューニングエンジンとか、排気量が大きいとか、色々な要素がありますが、熱量が大きい場合には、もう少し高温時性能の高いオイルが必要です。

この場合はエンジンによって最適な特性が変わるので、多少複雑になります。

例えばハーレーのような極端な空冷大排気量エンジンならタフツーリングが良いし、欧州車の場合は4CTが良い場合もあります。

ハーレーは少し特殊ですが、大抵のエンジンは、まずはトリプルアールで様子を見て下さるようお勧めしています。」

自分

「トリプルアールなら先程のチョイ乗り問題も含めて対応出来るという事ですか?」

ワコーズ

「プロステージでもチョイ乗りに完全には対応出来ないので、トリプルアールでもそれは同じです。

ただ、より競技向けのオイルに比べれば、トリプルアールはもう少し公道よりのオールマイティーな位置付けにしてあります。

回す人や大きめの排気量の人はトリプルアール、回さない人や小排気量ならプロステージを試してみて、極端にチョイ乗りが多いなら交換頻度を上げたり、もっとレスポンスや伸びが欲しければ4CRにしたり、熱ダレが多ければWRにしたり、といった選び方で良いと思います。

特殊な例としてはハーレーやビッグシングル、ツインの空冷のようなクリアランスが最初から大きくて気筒あたりのトルクの大きいエンジンの場合は油膜が1番厚いタフツーリングも選択肢になります。」

自分

「なるほど、ワコーズのラインナップの分岐が分かってきました。ラインナップの頂点はやはり値段の高さで見ると4CRのSSですか?」

ワコーズ

「あれは少し極端なオイルです。

レースに勝つ事や趣味として楽しむ事を考えると、フリクションの低減は欠かせません。

レスポンスや伸びに影響しますので。

レスポンスが良いエンジンは車体の動き自体が変わる。

これは実感した事がある方も多いと思います。

レースに勝つにも趣味として楽しむにも、これは最重要項目です。

エンジンオイルの理想は、どんな状況でも途切れない強い油膜と、フリクションをどこまで少なく出来るか?の両立です。

これを完璧に両立するのは理論上不可能ですが、それに挑戦するのは技術屋の夢です。

その夢に向かってコスト度外視で作ったのが4CRのSSとSRです。

定価だけ見れば他のオイルより高いですが、商売として見れば全く採算は取れていません。

そのくらい、現時点での全ての技術を詰め込んだオイルです。

私自身もZⅠが好きで良く筑波サーキットを走りますが、4CR-SSを使っています。」

自分

「ZⅠでですか⁉︎油膜は薄すぎないんですか?」

ワコーズ

「私も初めはそう思っていました。

もう少し空冷向きの油膜が厚いオイルの方が良いんじゃないか?と。

不安だったので油温計と油圧計を付けて油圧が落ちたら交換するようにしています。

そこまでしてでも興味本位ですが試して見たかったんですよ。

今の所、トラブルはありません。

それよりも抵抗が少ないのでレスポンスが良く、気持ち良く上までフケる。

レスポンスが良いのでアクセルでの姿勢コントロールがしやすい。

普通の4CRでも他のオイルよりは遥かに鋭いですがSSは、さらにその上を行きます。

この楽しさは捨てられません。」

自分

「なるほど。趣味である以上、楽しさも重要な性能って事ですね。

よく分かります。

そこまでしてでも楽しさを最優先したい人向けのオイルですか。

確かに他のオイルとは一線を画してますね。」

ワコーズ

「本社の開発としてはオイルに求められる性能を追求しただけでしょうが、私個人にとっては、楽しい思い出を与えてくれる貴重なオイルです。

営業としては個人的な意見は控えるべきかも知れませんが、私個人としては、このオイルは大好きです。」

自分

「なるほど。それも貴重な意見ですよ。

オイルメーカー社員が自分で使っているオイルの事は、一般ユーザーは興味がありますよ。」

・・・

この後、話が弾み、好きなサスペンションメーカーの話をしました。

ただ、それは専門外なので評価に自信が無い、との事でした。

今回の営業さんからは、一個人のバイク乗りとしての意見を聞けた気がします。

サスペンションの話については、今回の情報と、僕の意見も含めた総論という形で別の記事にまとめるつもりです。

ではまた(^^)