ワコーズ営業マンに聞いたエンジンオイルの使い分け。モチュールに関するコメントもちょっぴりあり。

今回はエンジンオイルの使い分けについてワコーズの営業さんに聞いてみました。

だんだん暑くなってきたある日、バイク用品店をプラプラしてるとオイルコーナーに見慣れた青とピンクのジャンパーの人が。

なんと、バイク用品店の在庫としてはほとんど見かけないWRを棚に陳列していました。

エンジンオイルオタクの端くれとしては、缶の格好良さではワコーズの青い缶と、昔のカストロールの四角いスチール缶、R30とかのヤツが大好きです。ワコーズ エンジンオイル

ちょっと挨拶してから質問させてもらいました。

前後の無駄話も入れると長くなりすぎるので質問部分だけを極力再現します。

自分

「APIのベースオイルの分類でグループ3のオイルがハイドロクラッキングオイルとして鉱物油でありながら100%化学合成油と日本では表記できるようになりました。

行きつけのバイク屋で聞いた話ではワコーズのプロステージはグループ3で本当に100%化学合成なのはトリプルアール以上だと聞きました。

そういう認識で合ってますか?」

ワコーズ

「その通りです。APIの分類に当てはめるという事ならプロステージはグループ3です。ただ、気を付けていただきたいのは、グループでの分類よりも、それぞれのオイルには得手不得手があります。

それがユーザーさんの使い方に合っているか?の方がよほど大事だという事です。」

自分

「なるほど。使い方ですか。レースとかストリートとかそういう分類の事かと思いますが、例えばプロステージはワコーズのラインナップの中ではどんな位置付けですか?」

ワコーズ

「まずワコーズのラインナップとしてサーキット、或いはワインディングのようなスポーツ走行に類するグループと、

通勤やツーリング等、一般道を普通に走るような、まぁホントの意味でのストリート向けのグループがあります。

その中で

スポーツ走行グループの中に4CR、トリプルアール、ダブルアールがあり、

ストリートグループには4CT、プロステージ、タフツーリングがあります。

一部のラインナップにはここから派生した特殊な物もありますが、大雑把な分類はこれが基本です。

そしてそれぞれのグループの中での油膜の厚さによる分け方があります。

スポーツグループの中で一番油膜が薄くてフリクションが少ないのは4CR、逆に油膜が厚くて保護能力が高いのがダブルアール、トリプルアールはその中間です。

ストリートグローブの場合は油膜が厚いのがタフツーリング、薄いのは4CT、中間がプロステージです。

この目的の為に最適な材料と製造方法を研究した結果、プロステージがグループ3になったという結果論です。」

自分

「なるほど。グループの3とか4とかの数字が大きいほど高性能だとは一概に言えないという事ですか。」

ワコーズ

「そうです。目的に合っているかどうかです。

極端に言えば、ハーレーでアメリカ横断ツーリングしたい人にとっては、いくら値段が高くても4CR-SSは一番、目的から離れているオイルです。」

自分

「ちょっと話が戻ってしまってすいませんが、先ほどの話で、スポーツとストリートの両グループの中で、油膜の厚さでラインナップを分けているという話でしたね?」

ワコーズ

「はい。スポーツ走行目線、究極を言えばサーキットでコンマ1秒を削る為に必要なのは、徹底したフリクション、つまり抵抗の低減です。

その為にフリクションとなる油膜を薄くします。

ただし、薄くするという事は金属の間にあるクッションを薄くするという事ですから、耐久性が犠牲になります。

これをどうやって両立するかが技術です。

ダブルアールは競技向けなのに油膜を厚くしています。

これは耐久レースをターゲットにしているからです。

厚くと言っても、タフツーリングよりは薄いです。

薄い代わりに、せん断応力に対しては強いです。

同じ油膜が厚い系のダブルアールとタフツーリングでも

耐久レースか長距離ツーリングか、のように使用目的によって

オイルが受けるダメージの強度と時間が違います。

そういう意味でも目的に合った使い分けが最も重要です。

ただ、一般ユーザーさんの需要としてはたまにはブン回す事もあるし、のんびり走る事もある。

なるべく幅広いレンジに対応出来る中間層のトリプルアールとプロステージが万能型と言えます。」

自分

「万能型って言い換えれば限界性能は特化型に敵わないって事ですね。

耐久系とスプリント系の頂点である4CRとダブルアールだけが2輪用と4輪用に分けられているのも使い分けですね。」

ワコーズ

「あれは湿式クラッチ対策です。湿式クラッチ式のバイクはエンジンオイルにモリブデンを添加出来ません。

正確に言えばモリブデンによって少し滑るので、プロのレースに使用される事が予想される4CRとダブルアールに関しては、少しのロスも許さないというスタンスで2輪と4輪を分けました。

ロスと言ってもホントに僅かな物ですから

トリプルアール以下のオイルはコストを優先して定価に反映させました。

ロスについて一般の方が気にする必要はありません。」

自分

「安くなった分でオイル交換時期を早めた方が良いと?」

ワコーズ

「まぁ、その方がエンジンには優しいですね。一般ユースでは多少の効率を気にするより先に水分混入や燃料希釈などの原因でオイルが劣化します。

それに対応するには、よく暖機するとか短距離走行をしない等がありますが、競技車両じゃあるまいし、移動手段としてのバイクでは、そう都合よくいかない事も多いでしょう。

となれば早めのオイル交換しかありません。」

自分

「水分というと冬場のクランクケース内の水滴の事ですか?」

ワコーズ

「そうです。冬は結露による水分混入と吹き抜けによる燃料希釈が両方起きます。

水分は油温が上がれば蒸発しますが、バイクの場合、冬の長距離走行は寒いので少し走って休憩する人も多いでしょう。

冬こそ早めにオイル交換すべきです。」

自分

「なるほど。自分のバイクが空冷なので夏の耐熱性の事ばかり気になっていたんですが、それだけじゃないんですね。」

ワコーズ

「はい。ただ、結果的には同じですよ。

例えば耐熱という事ならダブルアールやタフツーリングというオイルがあります。

分かり易く言えば粘り気の強いオイルです。

正反対のサラサラ系の粘り気の少ないオイル、4CRや4CTのような物ですね。

サラサラさせるにはポリマーの一種を添加します。

サラサラにすればフリクションの低減や燃費向上が望めますが水分を飛ばす能力は落ちます。

更に熱対策として粘度の高めのオイルを選ばれると思いますが、最初から粘度が高ければ交換時期になる頃にはちょうど良い粘度になっているかもしれません。

ついでに油膜も厚ければ燃料希釈の原因となる吹き抜けも少なくなります。

粘度が低いとストリート向けとしては燃費は確実に良くなりますが、金属面保護という視点での良い事は一つもありません。」

自分

「やっぱりそうですか。昔からバイクに乗ってた身としては最近のエコカーの指定オイルが0w-20と初めて聞いた時は信じられませんでした。」

ワコーズ

「あれは設計段階から低粘度に合わせてオイルラインの容量なども決めていると思いますが、金属面保護を考えると我々ケミカル屋としては何とも言えません。」

自分

「低燃費ブームですもんね。F1まがいのシャバシャバオイル使ってでも(苦笑)。バイクのオイル業界にもその傾向はあるんですか?」

ワコーズ

「バイクは車と違って趣味の比率が高いので、そこまでじゃありません。ただその傾向はあります。

有名他社さんの看板商品(隣に並んでたモチュール300Vを見ながら)でも、昔はダブルアールのようにネットリしてたのに、最近のロットの物は4CRのようにサラサラしてるな、と個人的には思います。」

自分

「お!ワコーズ社員さんの個人的な意見。貴重ですね。ありがとうございます。」

この後、オイルとは関係ない、当に個人的な会話に突入したのでここで切ります。

モチュール300Vが昔と違うというのは今日の初ネタでした。

今、ドリームに入ってる300Vがどの位もつのか見ものです。